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第4話 悪臭と汚部屋

last update Last Updated: 2025-12-18 13:02:28

ラファエルは金色の巻毛が美しい青年だ。

外見は天使のようだが、その実態は小悪魔に近い。

今世の私はこの外見に惚れ込んで、多額の持参金を持ってノイマン家に嫁いできたのだ

黙って見つめていたからだろう。ラファエルはまくしたててきた。

「おい! 何なんだよ! お前は! さっきから黙って人の顔を見つめて……! まぁ、僕が美しすぎるから見惚れるのも無理はないと思うがな」

ふんぞり返るラファエルの首元には、くっきり残るキスマーク。

「やれやれ……駄目ねぇ。そんな目立つ場所にキスマークなんかつけて……」

「な、何だって!?」

私の言葉に慌てたようにラファエルが首筋を手で抑えた。

「そっちじゃないわよ、左側だから。取り敢えず、スカーフを巻いてごまかしたら?」

「お、お前……僕を馬鹿にしてるのか!? 女じゃあるまいし男がそんなもの巻けるはずないだろう!? しかも何だよ! お前のその口の聞き方は! ……あっ! 勝手に入るなよ!」

私はラファエルを無視して室内へ入り、鼻をつまんだ。

「な、何よ……この鼻をつくような匂いは……」

室内は食べ物と香水の匂いで異臭を放っている。

「換気! 部屋の換気をしなくちゃ!」

「お! おいっ! 勝手に部屋へ入るな!」

「な、何よ! 勝手に私達の部屋へ入ってこないでよ!」

部屋の中央のテーブルには料理が残されており、椅子に座るアネットの姿があった。

肩にかかるふわふわな金髪に紫の瞳のアネットはこちらを睨みつけている。

「あら? いたのね。あまりにも静かだったからいないのかと思ったわ」

「何ですって! 誰に向かってそんな口を叩くのよ!」

アネットが私の前で本性を現す。眉を釣り上げ、歯をむき出しにする姿は……。

「まるでハイエナみたいね」

「ちょっと誰がハイエナよ!」

「おい! 待て! ゲルダ! 勝手に部屋に入るなよ!」

構わず窓あけると、3月のまだまだ冷たい風が部屋の中に一気に吹き込んでくる。

「さ、寒いじゃないか!」

「ちょっと! は、早く閉めてよ! 凍え死んじゃうわ!」

けれど私は寒さに強い人間。

「あ〜気持ちいい。2人とも、後最低でも10分は部屋の窓を開けて換気をしておくのよ。

それじゃ、私はこれで失礼するから」

「おいっ!ゲルダッ!」

ドアノブに手を触れた時、ラファエル声を上げる。

「何?」

「お、お前……、一体……何しにこ、ここへ来たんだよ!?」

ガチガチ震えるラファエル。

「はぁ? 私……最初に言ったわよね? 朝のご挨拶に参りましたって。それじゃあね」

――バタン

呆気に取られている二人を部屋に残し、扉を閉めた。

「よし、あの件は確認が出来たから……これで離縁の準備に入れるわ!」

私は意気揚々と異臭部屋を後にした――

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